英語が見える世界へ
ヨコが「見える英語」の世界に住むようになったきっかけは、日本の教室で習う英語の授業が、ゴールのない英単語の暗記マラソンに感じた瞬間でした。
ある日、ヨコは勇気を振り絞って職員室に入って行き、信頼する英語の先生に質問をしました。自分の好きな映画のセリフに見つけた進行形と完了形、完了形と受身形が同時に使われている2つの例文をその教師に見せ、「この英文が実際に使われているのであれば、進行形と受身形を組み合わせる英文も存在するのだろうか?」と、自分で作った英文を見せました。
その教師はヨコの英作文を見て感心するような反応を見せながらも、その英文が正しいとも正しくないとも答えず、ただこう言いました。「こんな問題は受験には出ない。クラスで使っている教材を暗記しろ。」
その日を境に、ヨコは英語の試験勉強に時間を費やすのをすっかり止めました。日本の中で役に立つ英語ではなく、日本の外で使われている英語が別に存在することがはっきり分かったからです。しかし、そのことを親や友人に話しても、理解してもらえませんでした。それ以来、ヨコは決してそのことには触れず、来る日も来る日も英文を眺めては、一語一句を日本語の文法を使って理解し、頭と心に整理し続けました。
結局、ヨコは自国の人でも入学が難関とされるアメリカの大学を卒業し、二つの言葉を自由自在に操りながら、英語を共通語にして参加する国際社会のグローバルシチズンとして人生を送っています。それでも、あの日以来ずっと抱え続けている孤独感をヨコは癒すことができていないと感じる日があります。
バイリンガルになるために必要なのは、自分の中にある好奇心や自尊心を枯らさない勇気と、自分だけに言葉やメッセージが見えたり分かったりすることが優越感ではなく孤独感をもたらすことを知り、それに耐える覚悟だと、ヨコは自分に言い聞かせてきました。
しかし、ヨコは今日、英語が見えるワールドに仲間を増やすことで、初めて孤独から解放され、幸せになれるかもしれないという希望を持っています。
